日本で初めて素麺が誕生したのは、桜井市の三輪地区。今から1200年以上前、大神神社の宮司の次男が飢饉と疫病に苦しむ人たちを見て、救済を祈願したところ、神の啓示を受けました。そしてその通りに、三輪の里で小麦をつくり、水車の石臼で粉を挽き、湧き水でこねて糸状にした食物で人々を救いました。これが素麺の起源だといわれています。
素麺は長い冬の間を蔵で過ごし、春になってようやく熟成のときを迎えます。
11月後半から寒い時期に渡って作られ、8〜9ヶ月もの間熟成のために寝かせられます。梅雨の時期にたくさんの湿気を吸い込み、梅雨が明けるとそれを一気に吐き出すことによって引き締まります。
製品として完成したあとも、箱の中で湿気を吸っては少し膨らみ、箱を開けるたびに吐き出します。まるで呼吸をするようにそれを繰り返しているうちに、素麺一本一本に腰が出てきます。
三輪素麺は、徹底した管理のもとにしっかりと熟成させられた、最高品質の素麺です。
ハリとコシが魅力の三輪素麺は、奈良桜井が自信をもってお届けする夏の風物詩です。
三輪素麺には、その細さに応じていくつかの等級があります。
この分類は、奈良県三輪素麺工業協同組合によって正式に認定されています。
※どの等級の素麺でも「1束/50g」となります。
三輪素麺を代表する最高等級品。1,200年にもわたる手延べ技術をつめ込んでつくりあげた超極細素麺は、しっかりとしたコシと艶やかな麺肌で上品な口あたりを演出します。
極細専用の小麦粉を使用し、さらに生産時期を限定。厳しい製品検査を合格した素麺は丁寧に結束され、見た目にも美しい仕上がりとなっています。細いながらも弾力のある逸品です。
寒時期に生産し、「誉」規格よりも細めに仕上げられています。組合ではこの素麺を蔵でじっくりと熟成させた古物(ひねもの)にして販売。コシ感に一層磨きがかけられています。
三輪素麺全生産量の約90%を占める規格。手延べ製法の基本を守り、厳選された小麦粉と塩で小麦の風味を生かした味わい深い素麺に仕上げられています。幅広い年代にご賞味いただいている標準的な太さの素麺です。
水はけのよい扇状地の三輪は、三輪山などからの水源があること、四方から山風が吹く盆地であることから、素麺づくりにとても適しています。細く延ばしやすく、切れにくいようにつくれるのは、いい塩梅に乾燥させることができる気候のおかげ。今では各産地の素麺がありますが、三輪素麺はひときわ細い素麺です。讃岐うどんのイメージから、太いほうが弾力を感じられそうに思いますが、強力粉と準強力粉を使ったグルテン豊富な三輪素麺は、細くてもしっかりとコシがあり、そののどごしは唯一無二の魅力です。
製造には早朝からの丸2日を要します。1日目のスタートは午前4時から。小麦粉と塩水を練った団子をこね、帯状にし、寝かせ、細く延ばしては寝かせ……を何度も繰り返します。途中で、油返しを行い、熟成されるうちに粘りが増し、延ばしても切れない麺に。夕方に作業を終えたら翌朝まで寝かせ、2日目も延ばしては乾かし、最終的には2mの高さから吊るして乾燥させます。
素麺の材料は小麦粉と塩、水、少量の食用油で、おもに極寒の冬につくられます。温度が高いと生地がだれてしまい、まとまらないからです。手延べ素麺はそれだけ、気温や湿度からその日の配合を経験値で計算することが重要となり、この最初の割合で、仕上がりが決まるといいます。まさに熟練の職人技が必要とされるのです。
「にゅうめん」とは温かく煮た素麺のことで、奈良県発祥の郷土料理。「煮麺」「入麺」とも書きます。素麺は夏の風物詩としても定番ですが、冬に食べる素麺「にゅうめん」は、心も体もほくほくと温めてくれる隠れた定番料理です。
しいたけや干しエビなどのさまざまな食材を薄味で煮て、茹でた素麺に汁を張って食べるのが一般的で、素麺発祥の地である奈良桜井三輪地区の近辺では、古くから愛されてきた食べ方です。
普通の素麺は煮たり温かい料理にしてしまうと、ぶよぶよと延びて本来の食感が損なわれてしまいますが、三輪素麺はその細さにもかかわらず、煮料理にしても驚くほどしっかりとした歯ごたえとコシを保ちます。三輪素麺は、にゅうめんにも打ってつけの素麺なのです。